日記

山岸俊之写真展2015 in吉祥寺

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山岸俊之展 おちぼひろい

展示タイトル 山岸俊之展 おちぼひろい会期 2015年5月12日(火)~24日(日)時間 午後12時ー午後7時「おちぼひろい」という「写真展」・ふたつ2015/3/30~4/11なびす画廊(銀座)&5/12~24アートギャラリー絵...

Posted by art gallery enogubako on 2015年5月16日

山岸俊之 おちぼひろい

展示タイトル 山岸俊之展 おちぼひろい
会期 2015年5月12日(火)~24日(日)
時間 午後12時ー午後7時

「おちぼひろい」という「写真展」・ふたつ

2015/3/30~4/11なびす画廊(銀座)&5/12~24アートギャラリー絵の具箱(吉祥寺)

【おちぼひろい、とは】

私は自分が作品を作る方法を「おちぼひろい」と称しています。それは、二つことからの引用ですが、一つは誰もが知るミレーの名画の題名です。このことは、後述する「絵のような写真」が念頭にあるための名画からの借用です。もう一つは、村上春樹氏が自身の邦訳本レイモンド・カーヴァーの『ファイアズ(炎)』をその解題でこの本のことを“落ち穂拾いのような”作品集と言っていることからです。こちらは、制作に於ける姿勢です。夕暮れに農夫たちが、採り残した穂を急いで拾い集めている姿を思い浮かべます。レイモンド・カーヴァーも、それまでの未発表作や、すでに絶版となった作品、書き直し等々を『ファイアズ(炎)』としてまとめました。ファイアズとは最後の創作意欲のことです。年老いた今「落ち穂拾い」のように身を屈め、過去のファイルを覗き込めば、自分では意図しなかったゆえに、今まで見落としていたデータが見つかります。それらは拾い物のように見えて、むしろ“ほんとう”はそちらの側にあります。

【あえて、写真展】

では、農夫が畑で「落ち穂」を探すように、私はファイルの中から何を拾っているのでしょう。思いがけないデータを見つけると「おっ、これは絵になるね」と呟くことがよくあります。そして、それを絵や版画のようにプリント仕上げしたいと思います。それは、若い頃、絵描きになりたかった私の性(サガ)でしょう。
デジタルプリントには、フィルムの現像~焼き付けのような実体を伴う手仕事は全くありません。そもそも、フィルムにあたるような物が存在しません。いわば、何の実体も無いデータというものが、たまたまインクという衣を着てふわりと出現した、というような感じでしょうか。そして、これらの作品は広義でプリントと呼んでもいいのですが、あえて「写真展」という旧態然とした用語を使うことで、逆に新しさが出ればと考えています。

【ふたつ、あること】

同じデータからインクや紙質を変えたものをふたつ並べることは、一昨年の森岡書店での個展会場で突然思い立ったことですが、もともと「ふたつ」には強いこだわりがあり、ふたつあって成立させることに興味があります。そのことは、今回短期間のうちに二ヶ所で発表することもそうですし、展示方法として偶数を基本にしたり、それぞれの作品が互いに関係性を持てるようにセレクトしたりすることにも見られるかと思います。
ものごとは、ふたつの方法で語られないと落ち着きません。今回のテキストにも、この「説明文」ともうひとつ「散文詩」のようなものを用意しました。ふたつの文章を書きながら、作品を作っています。これも文章と作品のふたつで成立させるためです。 以下。

おちぼひろい

山岸俊之

単線の列車が大利根を渡ると、地平線は水平線に変わる
春が近いことを思わせる暖かい午後 田んぼには少しずつ水が入って来ていて、川や運河の上を走っていると「十二橋・じゅうにきょう」という美しい名前の駅に着く
あれは何?と“幼子”の声が聞こえ、見渡せば遠くの岸辺に大きな鳥居が立っている
長い鉄橋には鉄柱とか欄干がなくて単線ゆえに 列車は水の上を走って行るようだ

母には「家族」がなかった ことを突然知らされた
たった一人の家族であった父を幼い母は破傷風で亡くしたとか
他人の家に引き取られ兄と妹として育てられたとか
陽の差す縁側で毎日機織りをしていた母の風景 その色合いが重くなってしまった
母が見られなかったたくさんの夢のことを想いながら、鹿島の照葉樹林を歩いて行く
すれ違う人たちはみな静かで 今日、ここで出会うことにふと「縁」という言葉が浮かぶ

同じような場所に立っていた 津軽半島の最深部、の小さな漁村
海からの強風に彼等は、使っていたあらゆる種類の木材を砦のように築き上げていて
木材は長い間潮風に洗われ、樹木に還っている あの村のことを この森を歩きふと思い出す

関東平野の端っこ、空っ風が吹き荒れる我が実家も樫の木の防風林に囲まれていたのだが
母は高熱で寝込んだ時、神主さんを呼んでくれと言い出して、切り株をお祓いしてもらった時のことが 脳裏をよぎる

再び橋を渡り、田んぼの上を走る頃には陽も傾き、風景は朱鷺色に染まる
同じ風景にも満たされた安らぎを覚えるのは、陽光の違いだけではない
思い出す 母の織った織物を受け取りに来た絹問屋であった伯父が
母と二人で静かに話していた 夕暮れの縁側
そう 母には間違いなく兄がいたのだ

風が強い夜には まどろみの中で私は実家に帰っている
生まれた時からあった柱時計の振り子の音だけが耳に聞こえ
木戸の隙間から入る月の光に照らされた土間にそっと手を触れれば
ひんやりと冷たさが確実に伝わってくる 幼き日々のように
あれは夢ではなく タマシイはほんとうに帰っていたのだ その時
母はこたつで眠っている

展示風景は、facebookpageに随時UPしています。

Profile

1977年 東京造形大学芸術学部美術学科絵画専攻卒業

展示履歴

2006 個展・BUTTERFLY 青山
個展・なびす画廊
個展・「過去からの手紙」ギャラリーDENEGA(青森県弘前)
個展・ゆりの木ギャラリー10周年記念展
2007
個展・なびす画廊
「ONJYUKUミュージアム」リゾートハウスオータニ(千葉県御宿町)
個展・「未来への手紙」ギャラリーDENEGA(青森県弘前)
2008
個展・一番町ギャラリー(埼玉県川越)
個展・なびす画廊(銀座)
個展・メタルアートミュージアム光の谷(千葉印旛郡松虫村)
「あるってアート川越2008」本町の長屋(埼玉県川越)
2009
個展・ギャラリー有心(埼玉県所沢)
個展・なびす画廊(銀座)
「紫緑展」(川越高校美術部)川越市立美術館(埼玉県川越)
2010
個展・なびす画廊
「ヒロサキの光・山岸俊之+弘前大学写真部」展 百合町展示館(青森県弘前)
個展・三井ビルSTABLES(青森県弘前)
個展・市川市文化振興財団市川談話室(千葉県市川)
2011
個展・なびす画廊
個展・「ヒロサキの光2・かけがえのない」展 百合町展示館(青森県弘前)
2012
個展・なびす画廊
個展・「APPLE CARD」ギャラリーDENEGA(青森県弘前)
「ぬくもりの森」展 STABLES(青森県弘前)
「HIROSAKI屏風」展示 平山萬年堂(青森県弘前)
2013
弘前市雪灯籠祭「雪に映す」(青森県弘前)
個展・なびす画廊
個展・IギャラリーDC(山形県石和温泉)
個展・ル・ヴァン信州上田店(長野県上田)
個展・森岡書店(茅場町)
2014
個展・なびす画廊
「紫緑展」川越市立美術館(埼玉県川越)

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