日記

高橋幸郎展-奈良を歩いていた頃-in吉祥寺

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2018年11月開催の企画展示

高橋幸郎展 -奈良を歩いていた頃-

筆執るとき

「広告紙の細片や新聞株式欄を貼りあわせて離れて見ると、まるで東京の繁華街ではないか」この十年以上これで制作している。
当初竹ヒゴ枠に貼った細紙片を重ねあわせることにより透かせて、つまり立体を使って絵(平面)に見せようという作業であったが、眼が景色を捉える時の意識の置き処という問題が出てきた何年か前からは平面で表現するようになった。
昨年の発表では「不用意に構図を入れてしまう」という方法を掴んだかに思えていたが、発表後には何とも不完全燃焼の感が残ってしまった。今回の発表に至る過程では、この悔いに似た思いを基に制作の動機にまで遡る捉えなおしを迫られた。
考えるに、近年は計画に沿って最終段階で最も興奮を伴う「おいしい所」にたどり着く組み立てをしていたように思われる。アクリル絵具の制作は乗せた絵具の痕跡が否応なく残る為、計画的に進めるべきだという制約を課してこれに縛られていたとも言えよう。これが制作全体の勢いを削いでしまい、用意周到に進めるだけの退屈な我慢の作業を強いていた要因でもあるようだ。
日々新聞に挟まれてくるキッチュな広告紙の細片を貼りあわせ眺める時の興奮は、筆執り画面に手をおろす瞬間の気持ちの高まりと等しいものでこれは何物にも代え難い。これまでにも制作を進めるうちに次第に困難が生じ散々な結果に何度も後悔はしているのに、この心の高まりへの期待がまた筆を執らせるのかも知れないと思う。
私の場合、大まかな調子が入り、隣りあわせた形と色の対比が見えてくる、その瞬間こそがエネルギー源として重要なのだから、今回は思い切って最初の興奮を画面に刻むことから着手することにした。進めるに従い画面は次第に窮屈になり矛盾を生じ混沌としてくる。が、そんな全体の配分に目を配り考え込まずとも、余白にシワヨセをもってゆけば何かしら進むものだと気づいた。なんだか今の私達の社会のようでもある。しかし、これはたかだか画面上でのこと、失敗しようが実害は無いから気に病む必要はない。こういう混沌の中に身を置く制作を展開するには、ひと目では全体を見渡せない横長な画面が自由に考えを廻らすことができ、そこに可能性の広がりを感じている。

 

■開催日

2018年11月6日(火)‐11月11日(日)
12-18時(最終日18時まで)
■会場  アートギャラリー絵の具箱
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-24-6 グリーンハイツ吉祥寺205

東京都武蔵野市吉祥寺本町2-24-6吉祥寺グリーンハイツ205

お問い合わせ 0422-20-2602

作者略歴

略歴 Koro Takahashi profile
1948 東京に生まれる
1972 東京造形大学 造形学部
美術学科絵画専攻 卒業

1972 ビナール画廊 個展(青山)
1973 ビナール画廊 個展(青山)
1977 シロタ画廊 個展(銀座)
1978 スルガ台画廊 個展(神田)
1981 夢土画廊 個展(銀座)
1982 シロタ画廊 個展(銀座)
1983 シロタ画廊 個展(銀座)
1985 シロタ画廊 個展(銀座)
1986 シロタ画廊 個展(銀座)
1988 シロタ画廊 個展(銀座)
1990 シロタ画廊 個展(銀座)
1992 シロタ画廊 個展(銀座)
1999 ギャラリー檜 個展(銀座)
2001 ギャラリー檜 個展(銀座)
2002 ギャラリー檜 個展(銀座)
2003 ギャラリー檜 個展(銀座)
2005 ギャラリー檜 個展(銀座)
2007 ギャラリー檜 distance展(銀座)
2008 ギャラリー檜 個展(銀座)
2009 ギャラリー檜 個展(銀座)
2011 ギャラリー檜 個展(銀座)
2012 ギャラリー檜 個展(京橋)
2014 ギャラリー檜 個展(京橋)
2015 ギャラリー檜 個展(京橋)
2015 ギャラリー絵の具箱 個展(吉祥寺)
その他 グループ展

2015年の展示

 

2017年展示

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